HOME  <  バストピックス

バストピックス

更新情報・ニュース

過去のバストピックスのトップへ

月別バックナンバー

2012年05月の記事

関越道の高速ツアーバス 重大事故に関する見解と要求
2012/05/28

関越道の高速ツアーバス 重大事故に関する見解と要求
2012年5月8日 自交総連


 自交総連本部(飯沼博中央執行委員長)は5月8日に開いた第2回中央闘争委員会で、「関越道の高速ツアーバス重大事故に関する見解と要求」を次のとおりまとめました。

1.4月29日午前4時40分ごろ、群馬県内の関越自動車道において、金沢発東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)行の夜行高速ツアーバスが道路左の防音壁に激突し、乗客7人が死亡、乗員含め39人が重軽傷を負うという重大事故が発生した。バスを運転していた43歳の運転者は5月1日に危険運転過失致死傷容疑で逮捕されたが、疲れていて居眠りをしていたと供述しているという。行程の545kmを交替運転者なしの1人で運転していた。
 バスのツアーを企画したのは大阪に本社がある「ハーヴェストホールディングス」という旅行会社、バスを運行していたのは千葉県の「陸援隊」という貸切バス事業者である。

2.すでに多くの報道等でも指摘されているように、この事故の背景には、規制緩和による貸切バス事業の過当競争激化、運転者の労働条件の悪化がある。
 貸切バス事業は2000年に規制緩和されて以降、99年度から09年度にかけて、事業者数は2336が4392に88%も増える一方、営業収入は5434億円が4474億円に減少している。大量の新規参入による過当競争、安売り競争が激化し、運転者には長時間で過酷な勤務と低賃金が押し付けられ、バス運転者(乗合含む)の年間賃金は538万円から386万円に28%も低下している。
 さらに規制緩和以降、旅行業者が貸切バスを活用して高速道路を経由する2地点間の移動を目的とする募集企画旅行を販売する「高速ツアーバス」といわれる形態が急速に拡大した。高速ツアーバスは、道路運送法にもとづく乗合バスの規制が適用されず、安全性など様々な問題が指摘されていたものであり、今回、事故を起こしたのも、この高速ツアーバスである。
 一般の貸切バスも含め、旅行を企画する旅行会社と運行を請け負う貸切バス事業者との関係では、過当競争状態にある貸切バス事業者の立場が圧倒的に弱く、公示運賃を大幅に下回る低運賃や無理な運行計画が旅行業者から押し付けられる事例が蔓延、道路運送法違反の日雇い・アルバイト運転者の雇用なども増える傾向が顕著になっていた。
 今回事故を起こした陸援隊という会社は、こうした貸切バス事業の問題点をことごとく体現しているような問題事業者であることが、その後の調べで明らかになってきた。運転者は違法な日雇いで、自分の所有するバスで中国人向けバスツアーを違法な名義借りで個人営業、今回の金沢での休息期間中にも自分の所有するバスの修理手配などをしていたと報道されている。まともな運行管理や点呼もしないという非常識な無管理状態で営業し、多数の道路運送法違反があったことも明らかになっている。今回の運行は、旅行会社から別の2社を介在して受注したもので、東京─金沢往復を公示運賃の下限35万6500円(545km×2日で試算)の半額以下の15万円で受注していたといわれている。同社は、もともと「インバウンド」といわれる外国人旅行客のツアーに特化していた会社で、東日本大震災により外国人旅行客が激減する環境のなかで、生き残りのために安値をいとわない状態にあったと思われる。

3.こうした貸切バス事業をめぐる問題点は、07年2月に大阪で起きたあずみ野観光バスの過労運転・死傷事故をきっかけに社会問題となり、国土交通省が08年9月に1日の乗務距離670km以上は交替運転者を配置することとした指針を定めたのをはじめ、10年9月には総務省行政評価局が貸切バスの安全確保対策に関する行政評価・監視に基づき国土交通省等に勧告を行い、国土交通省では「バス事業のあり方検討会」を10年12月から開催、今年3月に報告をまとめたところであった。

4.自交総連は、規制緩和が強行される以前からその危険性を指摘し、過当競争が運転者の労働条件を低下させ、いずれ重大な事故がおきかねないことを再三にわたり指摘してきた。にもかかわらず、あずみ野観光バス事故に続き、再び多くの人命が奪われる重大な事故が起きたことは誠に残念であり、対策が後手となり、的確な対応となっていなかったという点で国土交通省はじめ行政当局、政府の責任はまぬがれない。
 交替運転者の配置指針が1日670kmとされたことについて、自交総連は、その制定当初から、運転者の疲労の実態に合わず、500km以下とするように国土交通省に要請してきた。また、この配置指針の距離が1日の運転時間の上限を9時間とした運輸規則の規定から算出されたものであり、さらにそのもととなったのが厚生労働省告示の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の規定であることから、厚生労働省に対しても同告示の改正を申し入れてきた。
 総務省の行政評価の調査には積極的に協力して問題点の摘出に貢献した。その結果、的確な勧告がなされたにもかかわらず、それを受けた国土交通省の「バス事業のあり方検討会」での論議は、勧告で指摘された点に真剣に応えないものとなっていることが中間報告の段階で明らかになったため、昨年10月には国土交通省と同検討会に対して適切な最終報告とするよう申入れを行った。旅行会社の要求を断れず運賃ダンピングが常態化していることやインバウンドの問題点、アルバイト雇用の実態なども指摘して、改善を申し入れた。しかし、この要請の趣旨は生かされず、不十分な最終報告が今年3月に出された矢先に、今回の重大事故が発生したのである。
 バス事業のあり方検討会報告の問題点は別添のとおりであるが、高速乗合バスと高速ツアーバスを一体化して新たな高速乗合バス規制に移行するというものの、具体策は未定が多く、乗合バスに関しては従来より規制が緩和されるものである。さらに、貸切バス事業者に無理な運行と低運賃を押し付けている旅行業者への指導・監督の強化は骨抜きとされ、運賃適正化は先送りされている。

5.交通機関にあって安全を担保するのは、直接、運転に携わっている運転労働者である。この労働者の労働条件を改善して、安全運転で生活できる賃金・労働時間を保障しない限り、真の安全は確保できない。
 政府は、この間の交通運輸事業の規制緩和政策を真しに検証し、必要な規制の強化をはかるべきである。
 国土交通省・観光庁・厚生労働省に対して、早急に以下の点の改善を求めるものである。

 〈1〉届出運賃(公示運賃)違反の是正措置を講じること。また、法違反の日雇い・アルバイト運転者を一掃するため、監督・指導の強化をはかること。
 〈2〉低運賃や無理な運行(旅行行程自体が改善基準の拘束時間をオーバーしているもの等)を押し付ける旅行業者への監督・指導を強化し、罰則規定を創設すること。
 〈3〉高速ツアーバスの監査を強化し、高速乗合バス規制の緩和は行わないこと。
 〈4〉交替運転者の配置基準は1日500km以下とすること。
 〈5〉深夜運行は、運転者2人制(ツーマン化)とすること。
 〈6〉「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を法制化すること。当面して、(1)拘束時間1日13時間以内、(2)休息期間11時間以上、(3)運転時間1日7時間以内、(4)連続運転時間2時間以内とするなどの改善を早急に行うこと。
以上

ツアーバス事故 国交委・参考人質疑
2012/05/28

みんなの党以外、全党規制強化の論調
規制緩和の破綻明らか


 死者7人、重軽傷者39人というツアーバスの重大事故を受け5月18日、国土交通委員会参考人質疑が衆院第18委員会室で開催され、みんなの党の柿澤未途議員だけが、今回の事故は規制緩和によるものではないとの論調を展開し、火消しに躍起になっていました。各党からは行き過ぎた規制緩和の是正を求める意見が続出し、政府参考人の中田自動車局長は6月中に厚労省、専門家と協議する旨(むね)明言しました。

 衆議院・国土交通委員会には、日本バス協会の小田征一(ゆきかつ)副会長、高速ツアーバス連絡会の村瀬茂高会長、関西大学の安部誠治社会安全学部教授が、参考人として出席し、今回のツアーバス事故の背景についてそれぞれ意見を述べました。
 参考人の意見陳述を受け民主(鷲尾)、公明(冨田)、共産(穀田)、自民(平沢)、社民(中島)は、事故の原因は行き過ぎた規制緩和によるものだとした角度で指摘していましたが、みんなの党(柿澤)だけは、業界実態を直視せず事故の背景に切り込むこともなく規制緩和論者そのものの主張を展開し、村瀬参考人と政府参考人にのみ質問するなど、異常さが際だっていました。

自民、党利党略が優先

 また、本来ならば国土交通委員会が開催され是正に向けた議論がなされなければなりませんが、前田国交大臣の問責問題があり、自民党が難色を示し参考人質疑になったようです。
 それを裏付けるように平沢議員は、今回の事故とまったく関係のない前田大臣の公職選挙法問題について、執拗に警察庁と法務省に捜査状況を質疑するなど永田町と国民との温度差が垣間見えます。

共産、再度質疑求める

 規制緩和に最後まで反対した日本共産党からは、穀田議員が質疑に立ち「なぜ今回の事故を防げなかったのか、あずみの観光バス事故、総務省勧告、規制緩和路線の検証も含め国交省の責任は重大だ」と指弾し、「法令が安全を守ることになっていない、安全の最後のとりでは労働者、労働実態の改善や抜本的な規制強化が必要だ」とし、早急な対策を求めるとともに「旅行業界と貸し切りバス会社、現場の代表を招致して参考人質疑をもう1回やるべきだ」と提案しました。

バス規制強化へ転換せよ
2012/05/15

夜間の2人運行法制化、改善基準告示の改正・法制化急げ


 4月28日に発生した関越道・高速ツアーバス事故は行政当局による立入検査、マスコミの取材が進むにつれて新事実が次々と判明。バス会社「陸援隊」が、事故を起こした運転者を含め複数の日雇い運転者に乗務を依頼していたことや、旅行会社「ハーヴェストホールディングス」と「陸援隊」の間に旅行会社とバス会社が1社ずつ介在して仲介料が発生していたことなど、ツアーバスの実態が浮き彫りになっています。

 「我々は“夜間の運転者2人制義務づけを急がないと大事故が起きてしまう”と警告してきた」「国土交通省がのん気すぎたから事故が起きた」──5月1日午後、自交会館・中会議室。NHK「クローズアップ現代」の取材に応じた大阪地連・バス部会のなかまは、こう悔しさをにじませました。
 そして、事故の背景には規制緩和による貸切バス事業の競争激化、中小バス会社の足下を見た旅行会社による買い叩きがあること、現在の運転距離規制670キロは2日を平均した1日の距離なので、隔勤であれば1340キロ走行も可能で実質無制限であること、改善基準告示が定める休息期間(8時間以上)では、通勤や生活時間を差し引くと睡眠時間が充分にとれないことなどを証言しました。
 国交省は今回の事故を受け、運転距離や運転時間の規制を見直す検討を始めるとともに、当面の措置として日本バス協会、高速ツアーバス連絡協議会に夜間の原則2人運行を要請しましたが、遅きに失したと言わざるを得ません。
 自交総連は運転距離規制が制定された当初から「上限1日500キロ」に改正するよう国交省に求めてきました。そして670キロの根拠が改善基準告示(運転時間上限1日9時間)にあったことから同告示の改正、および法制化による罰則の盛り込みを厚労省に要請してきましたが、実現を待たずに事故が起きてしまいました。
 総務省が2010年に貸切バス事業の安全確保対策に関する勧告を出したのを受けて国交省が設置した「貸切バス事業のあり方検討会」は、3月30日付で「最終報告書」をまとめていますが、総務省が指摘した安全上の問題点には応えず、旅行会社への監督・指導強化についても骨抜きにされています。
 惨事を二度と繰り返さないためにも、政府はこの間の交通運輸の規制緩和を反省し、ツアーバスの監査強化、旅行業界への監督・指導強化、夜間2人運行の法制化、改善基準告示の改正および法制化を明確に打ち出すべきです。

 ※=厚生労働省告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」

関越道・ツアーバス46人死傷事故 旅行業界・行政の責任は重大
2012/05/07

改善基準の改正・法制化が急務
都市間ツアー“ワンマン”禁止を


 4月29日未明の関越道・ツアーバス7人死亡事故。規制緩和による競争激化で乗務員の労働条件悪化が進む中、大阪地連・バス部会は「改善基準」の実効性の乏しさ、ツアーバスの発注元である旅行業者の「買いたたき」を指摘し、行政や関係業界に改善を求めてきましたが、恐れていた事故がまたしても起こってしまいました。

片道9時間・夜行を1人運行
値引き競争が招いた過労運転


 マスコミの報道によると、事故を起こしたのは旅行会社「ハーヴェストホールディングス」(大阪府豊中市)が企画、バス会社「陸援隊」(千葉県印西市)が運行を請け負ったツアーバス「ハーヴェストライナー」。28日午後10時10分に金沢市を出発、高岡市でも利用者を乗せ、新宿駅、東京駅を経由して東京ディズニーランド(TDL)に向かう予定でした。料金は3500円です。
 29日午前4時40分頃、群馬県藤岡市の関越自動車道上り線・藤岡ジャンクション付近で道路左側の遮音壁に衝突。利用者45人のうち7人が死亡、運転者を含む39人が重軽傷を負いました。
 現場は緩やかな左カーブで、バスは単独で遮音壁に突っ込み、路面にタイヤ痕はなく、運転者は警察の調べに対し「寝てしまった」と話しています。

大手旅行会社の圧力に屈したワンマン運行規制(670km)

 この運転者は、27日夜〜28日朝にかけてTDL→金沢間を約10時間乗務し、その日の夜に復路に出発する、いわゆる「日帰り」で、しかもワンマンでした。仮に2時間に1回、15分の休憩をとっていたとすれば、運転時間は「改善基準」が定める1日あたり上限の9時間となります。TDL〜金沢間の行程は2つあり、510キロと545キロ。現在の走行距離規制は1日あたり670キロですが、運転時間にせよ、走行距離にせよ現在の規制では安全が守れないことが実証されました。

生理学的な規制必要
人間は機械ではない


 ハーヴェスト社の役員はマスコミの取材に対し「国の運輸基準上の問題はない」との認識を示し、運転者が2時間に15〜30分程度の休憩を取るよう定めた「運行指示書」を交わしていたと説明していますが、指示をしておけばそれで利用者に対する責任を果たしたことになるのでしょうか。利用者には「ハーヴェストライナー」の運行会社、運転者について、情報を知る手段がありません。

旅行業者の横暴加速
バス会社にしわ寄せ


 2000年の規制緩和以降、参入ハードルが下がり白バス営業(無許可)をしていた者まで観光バス業界になだれ込み、中小事業者が急増した事から旅行会社優位の力関係が進みました。
 低価格を実現するために観光バス会社にしわ寄せ(買いたたき)がされ、乗務員の労働条件低下が進む=「安心・安全」が切り売りされ、何も知らない利用者が最終的に被害を受ける──。大阪地連はこう警鐘を鳴らし、この間、国土交通行政に規制強化を求めてきました。
 そうした中、27人もの死傷者を出したあずみの観光バス事故(07年2月)が起こり同年3月、私たちは業界実態を国交省に告発し是正を強く求めましたが、当時の課長補佐は、観光バスの安全確保に「これから講じる」「利用者は安い運賃でいいと思っている。怖いと思ったら乗らなければいい」と強弁する始末で、余りの回答に私たちが抗議すると慌てて「一刻も早く対応する」とした態度でした。

繰り返される“悲劇”
人柱行政を止めろ!!


 大阪地連は09年4月、総務省行政評価局総務課と意見交換し、旅行業者の横暴や労働者の労働環境の実態、またワンマン運行の走行距離規制670キロも隔勤であれば1340キロを容認し、実質無制限につながる旨指摘しました。
 同省も独自に乗務員や事業者への聞き取りを行い、一昨年9月「安全確保を求める勧告」を関係行政に出すなど問題が表面化しました。しかし国交省は迅速に実効性が挙がる施策をとらず今回の事故に至ったと言え、いつまで人柱行政を続けるつもりなのでしょうか。