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公共交通空白地・丹後町コミュニティー守りたい
2017/04/25

公共交通空白地・丹後町コミュニティー守りたい NPO法人気張る!ふるさと丹後町の東和彦専務理事(左)と懇談する

−デマンドバスや自家用有償旅客運送を活用して−


 自交総連関西ブロック協議会は4月12日、京都府京丹後市丹後町で行われている自家用有償旅客運送NPOの東(あずま)専務理事や峰山自動車・矢谷社長と懇談し、現状の抱えている課題について意見交換しました。

「ささえ合い交通」・東専務理事
自家用有償旅客運送
地元としては「歓迎」


 関西ブロック協議会(福井勇議長)の代表ら8人(以下、調査団)は12日午前、京丹後市丹後庁舎(旧丹後町役場)で、NPO法人「気張る!ふるさと丹後町」の東和彦専務理事が中心となり自家用有償旅客運送を行なっている「ささえ合い交通」の現状や課題について意見交換しました。

日本で初めて
有償旅客運送


 懇談の最初に、「ささえ合い交通」の軌跡を放映した民放番組を視聴。その後、ICT(スマートフォン)を活用しマイカーを使った公共交通空白地有償運送の実践について、東専務理事がプロジェクタを使って説明しました。
 同専務は、「情報通信機器ICTを活用した公共交通空白地有償運送は日本では初めて。道路運送法78条2項で『一定の条件を満たした場合』は白ナンバーで、一種免許のみでも、国交大臣指定の講習さえ受ければ運行ができる。私たちは市営デマンドバス(予約制バス)を受託運行してきたから、有償旅客運送の許可が比較的早くおりたと思っている」と話しました。

地域住民から
観光客も輸送


 つづけて「15年4月に法改正があって『過疎地有償運送』の『過疎地』が『公共交通空白地』に変わった。名称だけ変わったのかというとそうではなく、それまでの過疎地有償運送は原則、地域住民しか運ぶことができなかったが、市町村長が認めたら、当地を訪れる観光客、インバウンドで海外から来た人も含めて運ぶことができるようになった。安倍首相の規制緩和等々の関係もあるかもわからないが、それとは別に、こういうことができることは非常に地元としては歓迎している」との感想を述べました。
 2004年に6つの町が合併して京丹後市が誕生。6つの町の面積はほぼ6分の1ぐらいずつですが、合併する前から丹後町は財政規模でも、人口・世帯数でも全体の1割程度。交通空白地・丹後町のコミュニティーを守りたいとの一心でこれまで奮闘してきた同専務理事は「市会議員22人のうち、丹後町選出は2人」「1割のために全部をやりあげるかとなると、いろんな面があるので、なかなか行政にフォローしてもらいにくい」といいます。

「率直な思いと
かけ離れてた」


 ウーバージャパンとの出会いについて同専務理事は「デマンドバスを運行していてほぼ1年くらい経った15年の6月頃に、ひょんなことから高橋社長と知り合った」と語りました。
 この間、白タク・ライドシェア合法化問題が遡上にあがり、その先兵として日本各地で蠢くウーバージャパンが介在したことから、「ささえ合い交通」(東専務理事)が矢面(やおもて)に立つことになり、タクシー業界等との様々な軋轢(あつれき)に対し、自身の「率直な思い」とかけ離れた展開に困惑していることを吐露しました。

うまくいかず
現金支払いも


 調査団から、ウーバーとの手数料や利用者の使用実績について伺うと、専務理事は「企業秘密です」とし、語ろうとはしません。
 安全性の確保については、対面点呼やアルコールチェック、使用車の任意保険以外に団体保険をかけ車両点検もしていると述べていました。
 運賃については、最初の1.5qまで480円、爾後は1q120円で最初はクレジット精算でしたが、町内ではスマホやタブレットの使用拡大がうまくいかず、16年12月21日から現金支払いもできるようにしたそうです。

「丹後町外への
運行の拡大を」


 今後の課題について伺うと、同専務理事は「丹後町外への往復運行を実現したい。弥栄(やさか)病院(弥栄町)や丹後中央病院(峰山町)に行く場合、現在は丹後町内でしか乗れないので、“行きは良い良い、帰りは怖い”。せっかくこういうものができたので、通院に限定するなど他の乗物に迷惑をかけない形で、この問題を克服したい」と述べました。
 同専務理事は「お年寄りから赤ちゃんまでタブレットやスマホ、そんな町にしたい。いろんなことにチャレンジしていく」と前向きで情熱に溢れた人物でした。
 最後に現金支払時のウーバーの取り分をどうしているのか訊くと「送金時に相殺している」といい、手数料のパーセンテージは「企業秘密」。将来は「38台38人まで増やす用意はある」と、近未来を見据えて動いている様子も垣間(かいま)見えました。
 自交総連は「公共交通空白地や空白時間の問題は今回の丹後町だけの問題ではなく、今後各地で発生する問題だ」とかねてから指摘していますが、本来、安心・安全と持続安定性を担保できる仕組みの構築が最重要です。
 住民の足を守る施策については、従前から鉄道や緑ナンバー(二種免許)が担う問題であり、自治体やバス事業者、タクシー事業者の総合的な連携が必要なのに、それを疎(おろそ)かにしてきたことが問題を複雑化させています。
 日本各地で過疎化がすすんでいますが、その地域に対し、国や関係自治体がもっと補助金も出し、知恵を絞って解決すべき問題です。こうした指摘には“お金がない”という反論になりがちですが、今ある予算の使い方を少し変えれば捻出できることであり、ハード面ばかりを重視しソフト面の交通政策を疎かにしてきた国や地方自治体の責任は少なくありません。