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参議院内閣委員会(5月19日)での意見陳述
2016/05/25

参議院内閣委員会(5月19日)での意見陳述 自交総連 高城政利中央執行委員長

 まず、国家戦略特別区域法自体、憲法95条との関係で違憲の可能性も含んでいるのではないかと考えております。なぜならば地域指定など内閣の判断、行政の意思決定によって、他の地域と違う基準が当てはめられることになり、特定地方公共団体の住民が持つべき権利を侵害する危険性があります。したがって、特区法による規制緩和が安易に行なわれることは、国民の生命・身体・財産の確保に関わる事項については、より一層の慎重さが求められるのではないかということをまず申し述べた上で、今回の改正案について意見を述べたいと思います。
 衆議院での審議では、附帯決議が付されておりますが、厳密に履行されるのかが重要になると思います。と言いますのも改正タクシー特措法でも附帯決議が付されましたが、充分には履行されていないというのが実態であるからです。

 さて、道路運送法78条以下で例外的に認められている自家用自動車有償運送に関し、外国人旅行者等にまで拡張し、同法の特例を認めようとしておりますけれども、現状では自家用有償運送を行なえるのは特定の者のみ、旅客も限定されており、運営協議会による同意制度が義務づけられています。
 それが今回の改正案では、外国人観光客以外の輸送も排除していません。従来の範囲を大幅に緩和し、特区の区域会議で実施を決めれば、都市部においても自家用有償運送を行なうことが可能になってくる危険性を含んでおり、乗客についての制限もなくなっています。これでは輸送の安心安全を確保するため、厳格な基準を満たしたバスやタクシーで担われなければならないという原則が大幅に後退させられています。
 区域会議の構成員には、特定事業の実施予定者を加えるとしていることから、ライドシェア事業者が構成員となり、規制緩和の制度設計に関与していく事態も考えられます。

 そもそも外国人が多く訪れるような地域には、バス・タクシー事業者がすでに事業展開しているのが一般的で、むしろ供給過多となっています。「観光旅客の移動のための交通手段を主たる目的」として、自家用有償旅客運送を認める必要性、すなわち立法事実は認められないと主張いたします。
 先月、交通空白地と言われる兵庫県養父市や京都府京丹後市に組織として訪問してきましたが、外国人観光客の姿はなかったと報告されています。また、タクシー会社のない地域では、制度化されているNPOや地方自治体による有償運送によって住民の移動手段を確保している地域も多く、一方でタクシー会社と地方自治体で協力、運行する乗合タクシーは、既に全国3000コースで運行しております。

 本改正案は、ライドシェアの全面的な導入に道を開くもので、ライドシェア解禁につながる法律案ではないかと危惧していることを述べておきます。
 ライドシェアは、IT仲介業者が車両も持たず、マッチングするだけで、すべての責任はドライバー任せにする危険なものです。ライドシェアは、輸送をしたい人が空いている時間を有効に活用し業務登録するなどと主張もしていますが、タクシー運転者は、道路運送法25条や運輸規則でアルバイト雇用、期間雇用が禁止されており、副業も禁止されています。これらはすべて安全の確保と旅客サービスの改善のためであることを強調しておきます。
 東日本大震災の時には、被災地仙台においてプロドライバーとして、公共交通機関を担う立場で、燃料が切れるまで被災者、住民の足を守り続けました。ライドシェアのドライバーにそういったことができるでしょうか。
 最後に、そもそもライドシェア企業の取締役であり、自らの利益になるような人が、規制改革によりライドシェアを推進する立場で産業競争力会議や新経済連盟など規制改革推進の中心にいること自体、常識的には許されないことだと思います。
 最後にライドシェア解禁につながる国家戦略特区法の一部を改正する法律案は、廃案にすべきだとの意見を述べて発言を終わります。