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白タク解禁につながる国家戦略特区法改正案は廃案に
2016/05/25

安心安全が最優先


 国家戦略特区法改正案を審議している参議院内閣委員会で5月19日、自交総連本部・高城委員長が参考人として意見陳述(3面に別掲)を行い、危険なライドシェアの解禁につながる同法改正案は「廃案にすべき」と訴えました。また同委員会では、同法改正案の立法事実(法律や条例の必要性や正当性を根拠付けるもの)がないことが日本共産党・辰已孝太郎議員の質問で浮き彫りになりました。

独はライドシェア禁止

 辰已議員は、白タクがなぜ禁止され、タクシーにはどのような規制があるのかと質問。政府参考人は「改善基準告示で労働時間を規制し過労運転の防止、安全を確保している」(国交省自動車局・持永秀毅審議官)、「乗客の急な要求にも応えられる高度な運転技術が求められるため二種免許がある」(警察庁・井上剛志交通局長)などとし、タクシーの規制は乗客の安全と利便のため「必要かつ適切な規制」(持永審議官)だと述べました。
 規制緩和の失敗の反省からタクシー活性化法ができた経緯を辰已議員が示し、「安心安全の運行は最優先、このことは経済の発展、経済の成長などのために犠牲にしてはならないということで確認したい」と石破茂・地方創生担当大臣に向けると、同大臣は「それで結構」と答えました。
 辰巳議員がウーバーなどが行なっているライドシェアでどのような問題が起きているかを質問すると、持永審議官は「ライドシェア企業は運行管理、車両などに責任を負わず管理が不十分、事故の際の賠償も不十分で利用者を保護できない」と答え、ILOが各国内の運送業者と同じ規制の枠組みを適用するよう決議していること、アメリカ、インドで乗客に対する暴行事件が起きていること、ドイツや韓国で禁止の司法判断が出ていることなどを明らかにしました。
 こうした危険なライドシェアを今後も認めることはないか、との辰巳議員の確認に石破大臣は「乗客の安全が確保されないものを認めることはない」と答えました。

有償運送講習1日だけ

 辰已議員は、特区法改正で実施しようとしている自家用有償観光旅客等運送事業について、現行の自家用有償運送制度も昨年4月の省令改正ですでに住民以外の観光客やビジネス客なども運送できるように緩和されたことを指摘したうえで、自家用有償運送でも乗客の急な要求に応えられる高度な運転技術が必要ではないのか、一種免許での運転を認めているのはなぜか、と質問。審議官は「講習を受けることで認めている」としましたが、講習は何日やるのかとの確認に「1日で修了する」と答え、十分な技術や安全が確保されない実態が明らかになりました。
 このような制度を特区でやる必要があるのか、現行法でもできることを特区でやる立法事実があるのかとの辰巳議員の質問に、持永審議官は現行法と特区では「発動要件が違う」と答えました。そこで辰巳議員が、自家用有償運送の認定を受けている自治体のうち、昨年の省令改正後、観光客輸送を行なっている自治体の数を質すと審議官は7市町村と回答。発動要件が違っても自家用有償運送で観光客輸送が可能であり、立法事実のないことが浮き彫りになりました。

五輪で需要は伸びない

 辰巳議員は「観光客を乗せるというなら二種免許を持ったタクシードライバーが運転することがふさわしい」として、自交本部・高城委員長に質問しました。
 辰已 2020年の東京オリンピックに向けて規制緩和をジャンジャンやろうという話もあがっていますが、これについてどのように考えますか。
 高城 1964年の東京オリンピックでは3567台の増車が行われました。交通渋滞の関係もあり需要は伸びなかった、結果的に経営が悪化して免許を返上する事業者も相次いだと聞いています。
 辰已 オリンピックでは安全なタクシーに乗ってもらうことこそ本当の「おもてなし」ではないでしょうか。地方ではタクシー事業者も努力していると思いますが、乗合タクシーなどの事例を紹介してください。
 高城 山形県の三川町では循環バスが定時運行していましたが、1運行で利用者は3〜4人でした。デマンドタクシーならコストダウンとフットワークの良さ、加えて車が玄関までつけられるということで、タクシー会社が自治体と粘り強く交渉して切り替えたという事例があります。町内ならどこでも300円で運行しています。

 辰已議員は最後に、住民の足を守るためにタクシーをもっと根付かせること、デマンドタクシーなどへの国の支援拡充の必要性を訴えるとともに、「石破大臣は安全が第一だと答弁した。立法事実のない特区法改正はやめるべき」と強調して質問を終わりました。