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日本機関紙協会大阪府本部・第68回定期総会《自交総連からの発言》
2016/06/28

ライドシェア
白タク合法化

安さの裏側にひそむもの 被害を受ければ個人責任


 6月10日に開かれた日本機関紙協会大阪府本部・第68回定期大会で、大阪地連の庭和田書記長(同協会理事)が次のとおり発言しました。
 15人もの犠牲者を出した軽井沢のスキーツアーバス事故以前にもたくさんの人命が失われてきたことは皆さんもご存知だと思います。バスは2000年に規制緩和が行われ新規参入と運賃競争が起こり、安全のために必要なコストが削られていくのと同時に労働環境が悪化、運転者の年収も700万〜800万円が当たり前だったのがいまは400万を切るという状況が背景にあります。この間、国交省などが重大事故を受けて規制を強化したなどというふうに報道されていますが、その中身はザルで“抜け穴”だらけです。
 利用者は業界の内側を知りません。今回の軽井沢事故も大型未経験の運転者が起こしました。規制緩和前までバス運転者というのは30歳以上、妻帯者で、大型車の経験を積んで、バス会社に入社後も先輩から教わって一人前になり仕事をこなしていました。夜行バスやツアーバスなど料金が“安い、安い”と喜んでいるのが、本当にいいことなのか直視しなければなりません。
 私たちは国交省、厚労省に対して“また重大事故が起きる”と何回も警鐘を鳴らして、実態を告発してきましたが、その後にまた事故を繰り返しているという流れです。実効性のあがる規制強化の方向性に舵を切るべきです。
 もう一点お伝えしたいのは、タクシーの分野で「ライドシェア」という言葉を耳にされていると思います。この頃マスコミでもさかんに「民泊」と「ライドシェア」の報道が目立ちます。「ライドシェア」とは相乗りという意味です。タクシー事業を行うには道路運送法4条で、国交大臣の許可が必要ですが、ライドシェアはそういうものから全く離れたものです。米国企業の「ウーバー」とか「リフト」とか、マレーシアを拠点にした「グラブタクシー」などがあります。
 楽天の三木谷浩史代表は、リフトに30億円出資し、そして規制改革会議や産業競争力会議を活用して政府にライドシェア・白タク合法化を迫っています。こうした一連の動きの中で道路運送法74条2項に基づく自家用有償運送が、先の国会で観光客輸送などを目的に特区で行われることになりました。
 日本に住んでいるとわからないと思いますが、深夜に女性の酔客が一人で乗れるタクシーは世界中探しても日本にしかありません。日本では当たり前と思われていますが、昭和30年代、東大生が赤門前でタクシーにはねられた死亡事故を契機に「神風タクシー」に対する批判の世論が拡がり、規制が始まって今日につながっています。そういった歴史をふまえて安全を守るためにコストをかけてきた仕組みがいまのタクシーです。その仕組みを全部取り払って、安くて、スマホで簡単というライドシェアですが、裏側にある危険は全て個人責任、企業は責任を取りません。
 濡れ手に粟で金儲けをしたい三木谷氏をはじめ推進派は、業界が反対すると自分たちの既得権益を守るためだとか言いますが、私たちが白タク・ライドシェアに反対するのは、諸外国の事件や実態を直視し、その危険が利用者に及ぶからです。安心・安全なタクシー・バスを守るたたかいをホームページや機関紙で報じていますので、反対闘争にご支援ご協力を願います。